宅配便(14年度)が5年ぶりに前年度割れ

~ 消費税増税や値上げも影響、大手ネット通販では徐じょに宅配便離れも ~

M Report 2015年8月号から


国土交通省の発表によると、2014年度の宅配便取扱個数は36億1379万個で、前年度と比較すると2289万個の減少(前年度比−0.6%)となった。対前年度で宅配便の取り扱い個数が減少したのは5年ぶりである。このうちトラック輸送は35億7008万個で、前年度より2498万個の減少(前年度比−0.7%)。航空等利用運送は4371万個で、前年度より209万個増加した(前年度比+5.0%)。

宅配便取扱個数の推移(単位:百万個、%)
2011年度 2012年度 2013年度 2014年度
個数 前年度比 個数 前年度比 個数 前年度比 個数 前年度比
トラック 3363 105.3 3486 103.7 3595 103.1 3570 99.3
航空等利用運送 38 143.0 40 105.5 42 104.0 44 105.0
合計 3401 105.6 3526 103.7 3637 103.1 3614 99.4
(国土交通省調べ)
2014年度宅配便(トラック)取扱個数(単位:千個、%)
宅配便名 取扱事業者 14年度取扱個数 前年度比 構成比
宅急便 ヤマト運輸 1,622,040 97.4 45.4
飛脚宅配便 佐川急便 1,196,001 98.1 33.5
ゆうパック 日本郵便 485,044 113.2 13.6
カンガルー便 西濃運輸、他19社 135,337 96.7 3.8
フクツー宅配便 福山通運、他21社 122,565 97.2 3.4
その他(16便) 9,092 57.1 0.3
合計 3,570,079 99.3 100.0
(国土交通省調べ)
メール便取扱冊数の推移(単位:百万冊、%)
2011年度 2012年度 2013年度 2014年度
取扱冊数 前年度比 取扱冊数 前年度比 取扱冊数 前年度比 取扱冊数 前年度比
5339 101.8 5471 102.5 5638 103.0 5464 96.9
(国土交通省調べ)

メール便も2014年度の取扱冊数は54億6425万冊で、前年度と比較すると1億7347万冊の減少(前年度比-3.1%)となった。メール便ではゆうメール(日本郵便)とクロネコメール便(ヤマト運輸)の上位2社で96.3%を占める。

宅配便取扱個数(トラック)を各事業者別にみると、宅配便全体の45.4%のシェアをもつヤマト運輸(宅急便)が16億2204万個で、前年度比2.6%の減少。33.5%のシェアで第2位の佐川急便(飛脚宅配便)も11億9600万個で、やはり前年度比1.9%の減少となった。それに対して13.6%のシェアを持つ第3位の日本郵便(ゆうパック)は4億8504万個で、前年度より13.2%の増加であった。これら宅配便(トラック)の上位3社で、宅配便(トラック)市場の92.5%を占めている。

2014年度に宅配便が前年度を割り込んだのは、消費税増税前の駆け込み需要の反動が考えられる。2013年度末の駆け込み需要が大きかったために、2014年度の前半にその反動が出たことが予想されるからだ。

さらに、佐川急便やヤマト運輸の料金値上げも影響しているものと思われる。佐川急便は2013年度から値上げ要請をしてきた。また、ヤマト運輸も2014年春から大口取引先への値上げ交渉を展開した。この結果、日本郵便のシェアが増加している。2013年度と2014年度のシェアを比較すると、ヤマト運輸は0.9ポイント、佐川急便は0.4ポイントそれぞれ落としている。それに対して日本郵便は1.7ポイント上昇した。

当リポートが取材を通して推測している今後の宅配便市場の予測では、宅配便市場全体は当分の間は拡大するものと思われる。一般的にいわれているようにネット通販などの伸びが背景にあるからだ。

しかし、ネット通販の増加に伴う宅配便の拡大は、今後は中小ネット通販の伸びに依拠する形になるだろう。それに対して大手ネット通販会社では宅配便離れが進むものと予測される。すでに大手ネット通販では、宅配便事業者依存からの脱却を図り、自前の宅配システムの構築を進めつつある。

大都市圏では物流センターを核にして、配送密度の濃いエリアは地元事業者による自前の宅配システムを構築する。配送車両の小型化を進め、車両の回転を高めることで、半日配送や3時間内配送などを目指す。それには宅配便のネットワークよりも、自前の宅配システムの方が良いのである。自前の配送では非効率的な荷物や、複数の経済圏にまたがって宅配しなければならない荷物だけを宅配便会社に委託する、という形になってくる。

一方、宅配便事業者は、中小ネット通販事業者の取り込みが重要になる。また、大都市圏と地方では異なる集配システムになってくるだろう。全国を統一的な集配システムでカバーしていては収益性が劣ることになるので、信書配達網を活かせる日本郵便以外の宅配便事業者では、都市部における集配システムと地方での集配システムというダブル・スタンダード化が必要になってくると当リポートでは予測している。